立証責任の転嫁~相手に質問のみをするフェアでない言い分~①

2011年09月22日14:42

3-9 立証責任の転嫁

◎自分の論の正しさは自分で証明する
 説得力のある議論には必ずギャップがあります。
 そのギャップの中にあるのは「当然正しい」とみなしている
さまざまな考えであり、
それらすべてが正しいことを他の人に証明するのは不可能です。

 なぜなら、聞く人にとってその証明が説得力のあるものなら、
それにはさらにギャップがあり…という具合に永久に証明を続けなければならないからです。

 何かを論ずる場合、この「立証責任」は、
論者にとって非常に重いものです。

 あることで相反する意見をもつ者同士は、各自、
自分の論の正しさを証明せねばなりません。
自分の論の正当性を証明しようとせずに相手に質問のみをすることで
相手に一方的に立証責任を負わせるのは、
フェアなことではないからです。

 ──と、ここまでを読んで「それがフェアでないことには同意するが、
フェアでないことをしていけないのはなぜ?」
と私に質問をしたい読者がいるかもしれませんね──そう、
相手に立証責任を負わせる質問をするのは簡単なのです。

 つまりこうです。もしもあなたが何かを主張したいのなら、
相手に立証せよと求めるのではなく、
まず自分の側の意見を立証しましょう。つまり、たとえば、
「*の答えはAでもいいのではないですか?なぜそれでは間違いなのですか?」
(とのみ書き、Aであってもよい理由を書かない)
これではダメで、
「*の答えはAでもいいのではないのですか?というのは
○○だからです。なぜそれでは間違いなのですか?」
 
と書かねばならない、ということです。
 それが論ずる者のフェアな態度です。

 議論で「立証責任の転嫁」を行うと、
非常に汚い詭弁となりえます。それが次の例です。

A「霊は存在しますよ」
──(なぜそう言えるのか理由を述べていない点に注目)
B「そうかなあ。なぜ?」
──「Aが理由を述べていないので、これは正しい質問──
  立証責任の転嫁ではない質問)
A「では、あなたは霊が存在しないと思っているんですね。
存在しないって、なぜ言えるんですか?」
──(相手の質問を無視し、相手に逆側の意見を立証させようとしている
点に注目)
B「なぜ存在しないかなんて、理由は答えられないよ」
A「そうでしょうとも。存在しているんですからね」

(小野田博一著『正論なのに説得力のない人ムチャクチャでも絶対に議論に勝つ人』日本実業出版社p86~)



これまで何度も述べてきたように、
自分の論の正当性を支えるものは「根拠」であり、
根拠の説得力の大きさがその主張の正当性の強さになります。

ですから何かを訴えたいなら根拠を述べなくては話になりませんし、
たとえ根拠が添えられていたとしてもそれがいい加減なもので
正当性を支えるに足りるものでなければ根拠があるとはいえません。

したがって、相手の主張に対してその根拠(理由)がなければ、
それを求めるのは当然のことです。
それ以前に、「自分の論の正しさは自分で証明しなければならない」
というのが議論の原則なのです。

だから、上の引用中で言われているように、
「*の答えはAでもいいのではないですか?なぜそれでは間違いなのですか?」
(とのみ書き、Aであってもよい理由を書かない)
これではダメで、
「*の答えはAでもいいのではないのですか?というのは
○○だからです。なぜそれでは間違いなのですか?」
 
と書かねばならない
のです。

後者の前者との違いは、自分の主張に「というのは○○だからです。」
という「根拠」が主張されているかどうかということです。
主張に反論したければ、この根拠に反論すればいいのです。
それでその根拠が相手の正当性を支えるものでない、つまり
崩れてしまえば、相手の主張は間違いだということになります。

つまり、議論とは、お互いに自分の主張が正しいことを示す為に根拠を出して、
その正当性(正しく主張を支えているか)を諮る
(威勢のいい言い方をすれば戦わせる)ものなのですから、
まず自分の論の正当性は自分で証明しようとする姿勢でなければ
フェアではないし、議論にならないのです。(続く)
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